会 期:2024年10月19日(土)〜11月10日(日)11:15〜20:00
会 場:千草ホテル館内
母里聖徳氏の言葉より
「鉄に魅せられ全力で鉄鋼彫刻を制作した30代、長いモラトリアル期を経て60後半より又、彫刻を作り始めた。若い時から鉄都の工業力を活かして自分ならではの彫刻が出来ないものかと試行錯誤しながら様々なアートプロジェクト等も試みた。今は生まれ育った北九州、筑豊の産業史、古代史を調べて作品づくりに組み入れながら制作している。考えてみれば、この地は古代より農耕や文明がいち早く流入して繁栄を果たした所。文化度も高く日本国の礎を築いた魅力的な場所だ。
明治になり近代産業発祥の地となったのも潜在的な自然や大地の力と政治、経済や権力などが複雑に作用し現在に至ったと思う。地元の歴史を再考する事で己の中に眠っていた自負やアイデンティティを取り戻す。そして先人たちの叡智や生き様にならい未知なるパワーやエネルギーを感じとる事をめざしている。
この頃ようやく子供の時に感じていた鉄に対しての不思議な高揚感や満足度、安心感が「形」として表せるようになった気がする。
今回も北九州工業地帯にあるスクラップヤードで見つけた鉄の廃材(役割を終え廃棄された鉄たち)を使って作品を作り上げた。機能性を失った不用な鉄に精神性を見出し私の感じたイメージなどを組み込んで彫刻として再生した。日本の伝統を見据えた美術品としての付加価値や可能性を生み出す試みだ。作業としては30年前とほぼ変わりはないがコンセプトの明確化で、これほど制作が楽しくなるのか、面白い。
タイトルにした「鉄のある風景」とは、今まで私が取り組んでこなかった様々な具体的イメージを鉄材で表現してホテルのロビーや中庭に設置した作品群だ。展示している彫刻からかもしだされる私の好きな空間、鉄のある情景や雰囲気を充分に味わって楽しんでもらいたい。」
□母里聖徳氏プロフィール
1956年福岡県遠賀郡水巻町生まれ。1987年国際鉄鋼彫刻シンポジウム·YAHATA(東田高炉記念広場)、1990年ミュージュアム·シティ天神(福岡市)、1993年国際鉄鋼彫刻シンポジウム·北九州 93「the リサイクル」、1997年「マンドラゴラの実―現代美術が写す筑豊」展(田川市美術館)、2012年「ゴットン·アート·マジック」(田川市)、2014年「大隈アートマジック2014」(嘉麻市)など多くのアートイベント、作品制作を手がけている。近年では、2022年「鐵偶」宗左近生誕の地モニュメント制作(北九州市)、同年「母里聖徳·鉄鋼彫刻の軌跡展1986〜2022」 、2023年「鉄のしめ縄、鐵偶」豊山八幡神社モニュメント制作(北九州市)などがある。
小嶋 一碩氏(株式会社千草代表取締役会長)
工藤 健志氏(田川市美術館館長)
母里 聖徳氏(彫刻家)
司会:二宮 圭一氏(美術家)